うつ病のサイン

K・D 48歳  男性 会社員

以前から、肩こりがひどく針治療に行っていたのですが、一向に回復しません。最近では、肩から首筋にまで凝りが広がり、左右のどちらかの半身が痛むのです。
腰痛は、学生時代にテニスをしていたので、その頃からありましたが、最近、ひどくなっているように思えます。頭痛もあります。口の中がネチネチしていて、眠りも浅く、なかなか集中できません。
ひょっとして、内臓や血管に問題があるのかとも思い専門医に相談したり、頭部のCTを撮ったりしたのですが、何も問題はありませんでした。肩こりから、このように全身に痛みが広がることはあるのですか?

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肩こりから全身に痛みが広がり、とても不安な状態で働いていらっしゃるKさん。
内臓や血管に原因があると思われるのも不思議ではありません。
しかし、Kさんの「痛み」の原因は「こころ」にあると思われます。

家族関係や、会社でのお立場、交友関係など、様々な要素を考えなくてはなりませんが、それらのいずれかが(あるいはそれらの複数が)Kさんの精神的ストレスとなっていると思われます。

「痛み」はそのサインなのでしょう。おそらく、Kさんは軽い「うつ病」の状態であると思われます。

一度、心療内科か、精神科のクリニックを受診されることをおすすめします。ご自分の疾患を確認し、それと向き合うことが、病気を治す第一歩なのですから。


まず、「うつ病」について少しお話させていただきます。

よく、「うつ病は心の風邪」と言われますが、そんなに軽いものではありませんし、簡単に治るものでもありません。
うつ病は「脳の疲労」です。考えすぎて、脳が混乱し、疲れてしまい、うまく機能しなくなった状態です。

脳が疲労すると、どう決断するかに時間がかかり、同じ考えがグルグルまわり、堂々巡りをしだします。
その間、記憶力や集中力も低下し、テンションを持続する「気」が衰えてしまい、やる気がなくなるのです。

ここで一度整理しますが、「うつ病」は大きく分けて2つに分類できると思います。

一つは「大うつ病」、もう一つは軽度のうつ症状がでている「気分変調症」です。

「大うつ病」はれっきとした病気ですが、気分変調症は「うつ病」に近い症状で、いわゆる「グレーソーン」に位置します。
大うつ病がブラックだとすれば、「気分変調症」はブラックに近いグレーというわけです。
このグレーが健康に近いほどホワイトに近く、大うつ病に近いほどブラックに近いグレーになるわけです。


私も含め、このグレーゾーンにいる人が7~8割程度だと思います。
大うつ病になれば抗うつ剤(SSRIなどの選択性セロトニン再取り込み阻害薬)が必要です。
グレーゾーンの私たちは、不眠が続くようなら導眠剤、気分が不安定なら安定剤など、うまく薬とお付き合いできるといいですね。


軽度のうつ症状である「気分変調症」の特徴は、まず、朝の調子が悪い。
夕方には元気になるが、一日持続しない。
何事にも、興味が無くなり、喜びを感じることが少なくなります。
笑顔が消えてしまうのです。
後ろ向きで考えるようになり、自分を責めるようになります。
寝不足で疲れているのに、早朝覚醒(朝早く起きてしまい、そのまま寝られない)になり、身体のあちこちが痛み出します。
この、身体の痛みは、あるときは左半身に、あるときは右半身に、といったカンジで移動します。

これらの「うつ症状」の「サイン」を見逃さないようにしないと、限りなく「大うつ病」に近くなるのです。
気分変調症のうちに早めに治療をすれば、元気という「気」を取り戻せます。

私の治療院では、「うつ症状」を3つのカテゴリーに分けて治療しています。

1)「肝気うっ血型」(いつまでもクヨクヨ考えて、気分はイライラしている人)
もう過去のことなのに、こだわり続け、物事を後ろ向きに考えてしまう。
脈は弦を弾くような感じ。頭痛、不眠が常にある。 
胸や脇腹が痛い。 
唾が粘っこく、ため息が多い。
治療穴・「風池(ふうち)」、「神門(しんもん)」、「内関(ないかん)」、「太衝(たいしょう)」など。
(ツボの位置は他の項目で詳しく説明していますのでご参照ください)

2)「腎虚型」(身体がだるく、胸騒ぎがして眠りが浅い人)
頭が重く、耳鳴りがして、眠りが浅く、夢ばかり見る。
脈は細く速い。
のどが渇き、足腰がだるく、生理痛がひどい(男性の場合、インポテンツ)
治療穴・(「肝気うっ血型と同じツボを用いますが」、生命エネルギーが不足しているため、さらに「心兪(しんゆ)」(第5胸椎の横、脊柱起立筋の中央)、「腎兪(じんゆ)」(第2腰椎の横、脊柱起立筋の中央)、「太谿(たいけい)」(内くるぶしとアキレス腱の間、陥凹部)、などを加えます。

3)「気血不足型」(しんどくて、何もする気が起きない人)
特に朝は何もできず、動くこともしんどい。
顔色が悪く、青白い。
脈は細くてかすかに触れる程度。呼吸も浅く、寝ていても起きている感じがする。
口数が少なく、感情が出せなくなっている。
治療穴・(「肝気うっ血型」、「腎虚型」に加え)「合谷(ごうこく)」(手の親指と人差し指の間の骨がクロスする少し上の、人差し指側の陥凹部)、「安眠(あんみん)」(首の前部にある胸鎖乳突筋の頭の乳様突起の下)、など。


人からは「なまけ病」と思われる「うつ症状」ですが、家族には自分の症状をきちんと話し、理解を得ることが大切です。
頑張りすぎず、自分なりのペースが作れるといいですね。

また、夫や妻、両親など、周りの人が発している「うつ症状」のサインを見逃さないように注意する必要があります。
人前では元気に振る舞い、独りになると落ち込んでいる「仮面うつ症状」の人がとても多いのです。