生理痛

K子 女性  姫路市 42歳

生理前になるとイライラして眠れなくなります。仕事のことや、プライベートなことなど、すべてをマイナスに考えてしまいます。
家族から「うつ病」かもしれないといわれ、精神科を受診しました。
「軽い鬱症状です」と言われ、今は安定剤を飲んでいますが、生理痛は治らず。余計に落ち込んでいます。
一生、こんな目にあわなければならないのかと思うと、死にたい気分になります。精神科の医者に鍼灸治療をすすめられました。
針で鬱病や生理痛は治るのでしょうか。

_________________________________________________

K子さんには、早速、来ていただき、問診、脈診、触診などで、「月経前緊張症」だとわかりました。
この、「月経前緊張症」とは、月経の3~10日前から始まり、精神的にも、身体的にも、ボロボロの状態にまで落ち込み、月経が始まるとウソのように消えていく症状です。


特徴的なのは、頭痛、下腹部痛、のぼせ、下痢などに、吐き気、食欲不振、不眠など「うつ症状」に似た症状が伴うことです。
K子さんは月経前になるとイライラがつのり、つい家族にも不機嫌になり八つ当たりするので、家族の皆さんが神経過敏になり精神科への通院をすすめたようです。


K子さんは首、肩に異常な緊張があり、その痛みは背中にまで及んでいました。
これだけ体に異常があれば、不機嫌にもなります。
治療は、首、肩のこりを解消することから始めました。

(「肩こり・頚部の痛み」の項をご参照ください)」

そして、生理痛の治療は、下肢(足)には、「三陰交(さんいんこう)」、腰には「腎兪(じんゆ)」、もしくは「志室(ししつ)」、さらに、仙骨の上の「次髎(じりょう)」などに刺鍼します。

三ヶ月間、週に一度の治療を続け、イライラや不眠は解消し、六ヶ月で月経前痛もほぼ解消できました。

さて、女性の皆さんは「月経前症候群」という病名をお聞きになったことがあると思います。
「月経前症候群」と「月経前緊張症」とは、非常に似ていますが、異なる点があるので記述したいと思います。


「月経前症候群」は、生理の3~10日前後に下腹部痛があり、頭痛、下痢や便秘、手足のむくみ、体重増加などが特徴です。
さらに、これらの身体的負担が加わるとおのずと、不安定な精神状態になり、全身倦怠感を覚えます。

ただし、「月経前症候群」では、吐き気や不眠などの症状はあまり見られません。
この点が「月経前緊張症」との異なる点で、まだ、ガマンできる範囲なのでしょう。(個人差はありますが・・・)
刺鍼するツボは、「生理前症候群」も「生理前緊張症」と治療穴ほぼ同じです。

そもそも、生理とは子宮の内側の膜(子宮内膜)が、はがれ落ちる現象です。
「妊娠五ヶ月の戌の日に、腹帯をすると安産になる」という言い伝えがありますよね。
これは、犬が安産だということからきているわけですが、そもそも、犬のように4つ足で身体を支えている動物は、お腹に赤ちゃんがいても、その重みはお腹で受け止められます。
しかし、人間は、2足歩行のため、赤ちゃんの重みを受け止めるのは子宮頚部なのです。
そのため、人間の子宮頚部は繊維質が発達し、しっかりした構造になっていますが、しかし、お産の時は陣痛が起きてもなかなか子宮口が開かないのです。


このことが、生理の時も当てはまります。
子宮が収縮して出血をしようとしても、子宮口が閉じてしまって、陣痛と同じように痛みが生じるのです。
これにより生理痛は出血が始まる直前に痛みのピークがあり、生理が始まると少しラクになるのです。

もう一例、「生理痛」についての、症例をあげてみたいと思います。
いま、「はせがわ鍼灸院」で治療を受けておられる患者さんの例です。
(ご本人の了解はとってあります)


「23歳・OL」の方です。
学生時代から生理痛がひどく、就職してからも下腹部痛は治まらず、生理の2~3日は激痛に見舞われ、会社を休まざるを得ない状態になっていました。婦人科で診てもらっても「異常なし」といわれ、とりあえず鎮静剤をもらって生理痛をガマンしている日々でした。
来院され、診察してすぐに分かったことは、このOLさんは「冷え症」ということでした。


若い女性に多いのですが、冬の寒さもさることながら、夏のクーラーの直撃で足腰だけでなく、全身が冷え切っているのです。
足先などは氷のように冷たく、その冷気は内臓をも浸食し、腹診ではへそ周りがコチコチの緊張状態にありました。


治療は、この冷え症を取ることから始めます。
おへその横三寸(指4本分)にある「天枢(てんすう)」、その下、三寸の「大巨(だいこ)」、鳩尾(みぞおち)とおへそとの間の「中脘(ちゅうかん)」などに「お灸」をし、体表だけでなく、内臓も暖めていきます。

このOLさんは、お灸のおかげで消化器官がスッキリし、便秘や吹き出物が三ヶ月で治りました。
週に一度の治療で、2ヶ月目には足の冷たさも緩和され、血行が良くなっていました。
生理痛の治療は、「生理前痛」などと同じツボを選び、患者さんの身体個性にあわせて配穴します。


生理痛は女の宿命などとあきらめないで、しっかりとした治療や、クーラーの効いた部屋では靴下はもちろん、肌に冷気を当てないなど、最低限の予防はすべきでしょう。